漆喰で一番スタンダードな仕上げは硬押さえですが、最近はシンプルな 【撫で切り仕上げ 】 、お洒落な 【 パターン仕上げ 】 も人気がありますね。
私自身もたまに施工しております。
《撫で切り仕上げ》とは塗り付け後、水持ちが良い状態の時に鏝を通して仕上げる事です。
また、《パターン仕上げ》とは文字通り、パターン付け(模様付け)をする仕上げでの事であります。
《撫で切り仕上げ》 や 《パターン仕上げ》に関しては古くから存在しており、かの有名な 桂離宮 では 【 パラリ壁 】 という仕上げが施工されております。
また、引き摺り鏝という舟形の鏝を使用して、 【 引き摺り仕上げ 】 という仕上げ方法も伝統のある仕上げ方である一方、 【 砂漆喰の撫で切り仕上げ 】 などもシンプルながら良く見ると表情が素敵ですね。
最近では洋風住宅も増えてきたので、それに合わせた模様付けもどんどん開発されております。
センスの良い模様は見ていても気持ちの良いモノですね。
パターン仕上げの場合は、左官職人のセンスに大きく左右されますので、施工する前に 左官屋さんとじっくり打ち合わせをして、試験施工をしてもらうのが良いでしょう。
パターン塗りは私自身も大好きな仕上げなのですが、気を付けなければならない点もあります。
1、外部で施工する場合は設計の段階で庇を出来るだけ大きくする。
2、凹凸があるので年月とともにカビや汚れも付き、それを 《 自然素材の風合い 》 として捉える事が出来るお客様以外には外部でパターン仕上げは施工しない。
3、日本の漆喰は決してメンテナンスフリーではないので、いつかは塗り替えをしなければならない事をしっかり説明する。
最近は特に 「汚れない壁じゃなきゃイヤだ!」 というお客様も増えてきました。
そういったお客様には最初に サイディング や ガルバ をお勧めしたほうが無難かもしれません。
「どうしても外部に漆喰を塗ってほしい!」 と仰るお客様には、以上の事に気を付けてから施工したいですね。
パターン仕上げの凹凸が激しければ、それだけ埃が溜まりやすくなります。
内部ならば掃除をこまめにすれば大丈夫かもしれませんが、外部ならば土埃が雨の水分を吸ってカビの原因になるのですよ。
「 漆喰は強アルカリだからカビないよ!」 と仰る人もいるかもしれません。
しかし、現実には 漆喰にもカビは生えます。
それは何故でしょうか?
漆喰の主成分は消石灰です。
消石灰にはカビは生えません。
しかし、土埃と雨水があればカビが生えます。
簡単に書くと、
《 壁面に土埃が溜まる → 土埃が雨水を吸収する → カビの大好物がいっぱい → カビ発生》
という事です。サイディングやガルバでも土埃が溜まればカビが発生する ので、パターン仕上げでカビが発生しないと言うことはありません。
庇を大きくして壁面もフラットに近い状態にすれば、ある程度はカビや汚れを防ぐ事が出来ますね。
漆喰の強アルカリ性質も過信せず、壁の寿命を出来るだけ伸ばしてやる事 を考えていけたらと思います。
以上の事を踏まえて、外部で施工する時には色々と注意する点がありますので、お客様と施工側がしっかりと話し合って決めていきたいですね。
今回、この記事を書くにあたり 「左官屋の癖に塗り壁を貶める事を書くな!」 とお叱りを受けるかもしれませんが、あまりに世間一般で 「漆喰は強アルカリだからカビない。メンテナンスフリーの塗り壁だ!」という風潮が一人歩きしている ので、歯止めも必要かなと思い書きました。
「それが自然素材。カビや汚れが付いてもそれが渋味と風合いに繋がって良いじゃないか!」 と私自身は思っておりますが、自身の価値観をお客様にゴリ押しする訳にはいきません。
だけど、古い町並みや古民家で塗られている漆喰壁を見ても 「美しい!」 と思ってしまうのは私だけではないでしょう。
そのような価値観のお客様がもっと増えて、塗り壁が広まっていってほしいと思います。
その為には私達左官屋がもっと塗り壁の良さをアピールしていかねばなりませんね。
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