大昔から仕上げられている塗り壁、 【 本漆喰 】 の材料について説明します。
まず、私が考える 【 本漆喰 】の定義は、 『 海藻糊を炊いて篩に掛け、その液体に消石灰と麻スサを混入した物 』 です。
つまり、 本漆喰の材料は 《 消石灰 、 麻スサ 、 海藻糊 を炊いて抽出した液体 》 の三種類と水だけ です。
下塗りに使う 砂漆喰 は上記の三種類に骨材(砂、珪砂など)が加わります。
その他の材料《炭酸カルシウム、粉末海藻糊、メチルセルロース、ガラス繊維、ナイロン繊維、合成樹脂、その他》 等々、これらが混入された物は 本漆喰とは呼べません。
メーカー製の 漆喰製品(既調合品)も本漆喰ではない ですね。
以上が私が考える本漆喰の定義なので、異論があればコメントでご指摘をお願いします。
次に本漆喰の材料である 《 消石灰、スサ(麻スサなど)、海藻糊(角叉、銀杏草、布海苔)を炊いて抽出した液体 》について説明します。
まず、一般的な粉末消石灰の作り方ですが、
《 石灰岩を焼く → 生石灰が出来上がる →少 量の水を加える → 粉末消石灰の出来上がり 》
大ざっぱに書くとこんな感じです。
“少量の水を加える”の部分を 『水のたくさん入ったプールに生石灰を投げ込む』 と粉末消石灰ではなく、ヨーロッパの漆喰 【石灰クリーム】 が出来上がります。
石灰クリームに関しては別の機会で書かせていただきますね。
漆喰の主原料である消石灰でありますが、これまた何でも良いという訳ではありません。
消石灰には 石灰岩 から作られている物と 貝殻(赤貝、帆立、牡蠣、その他) から作られた物があります。
貝殻を焼いて作る消石灰を私達は 貝灰 と呼んでおり、この貝灰を作ってくれる業者は日本全国捜しても片手で数えられるぐらいしか居ないのですよ。
また石灰岩から作られた消石灰も 重油などの燃料で作った 《油焼き消石灰》 と 昔ながらの製法で作った 《塩焼き消石灰》 があります。
《油焼き消石灰》 の特徴は、重油で石灰岩を高温で焼き上げ、自動機械を使って大量生産をした物。
粒子が細かく均一なので漆喰を作った時にクラックが出やすく、左官材料として使うには難しい。
《塩焼き消石灰》 は、石炭と少量の塩を使って石灰岩を低温で手間暇掛けてじっくりと焼き上げて作ります。
粒子が不均一なのでクラックが入りにくい強い材料を作る事が出来ます。
ついでに 《貝灰》 の特徴も書きます。
貝灰は石灰岩から作った消石灰よりも不純物が多く、粒子も不均一なので左官材料としてはとても優秀ですが、生産に大変な手間が掛かるので、値段も石灰石から作られた消石灰とは比べようもないほど高価な代物です。
後継者不足にも悩まされているみたいなので、数年後はもっとレアな材料となるかもしれません。
次にスサの説明をしますね。
本漆喰に使われる主なスサの原料は 《 マニラ、サイザル、ジュート、ケナフ 》 という植物の繊維です。
他にも 大麻、苧麻、亜麻 などが使われていたみたいですが、現在は “ ほぼ ” 入手不可能であります。
スサも原料にこだわれれば、とても強い漆喰が出来ると思います。
日本全国捜しても強いスサを作っている業者は数少ないですが・・・
安いだけの弱いスサを使えば弱い漆喰壁になりますので、工務店や建築会社は単価を抑えるのではなく、本当の意味で良い壁を作る為にも考えていただきたいです。
次は海藻糊の説明です。
漆喰に混入する海藻糊は大きく分けて 《 角叉 、 銀杏草 、 布海苔 》 の三種類です。
私の地方では主に角叉と銀杏草が多く出回っており、布海苔は滅多にお目に掛かれません。
関西のほうだと布海苔が多いと聞きました。
海藻糊に関しては地域性があるのでしょうね。
左官材料として使うには熟成も必要で、角叉や布海苔は一年、銀杏草は三年の間、倉庫で保管すれば腐食発酵して繊維が破れ、糊の成分が出やすくなる との事であります。
この海藻糊を 加熱処理した後、乾燥させて粉砕処理した物 が 《粉末海藻糊》 であります。
便利な製品ではありますが、どうしても本物の炊き糊には敵いません。
現在、この 《粉末海藻糊》 は粗悪品(ケミカルを多く混入した物)が数多く出回っておりますが、なかには良い製品もあるので扱う場合は良く見極めてから使っていきたいですね。
海藻糊の代わりにメチルセルロース(メト◎ーズ等)を使う人もいると聞きますが、 “ 化学のり ” ですから、これを使う時点で自然素材ではなくなってしまいます のでご注意を・・・
本漆喰 と 既調合の漆喰製品 とでは強度がまるで違います。
あまり単価、単価と言わずに長い目で見れば、施工単価が 少々高くてもそれだけの付加価値が 【 本漆喰 】 にある と思いますよ。
以上で本漆喰の説明を終わります。
最後になりますが、偉そうな事を書きましたが私自身も手軽な既調合の漆喰製品に頼り過ぎている面があり、このノートの記事を書いていくウチに自身の中で色々な気持ちが芽生えてきました。
もっと深く本漆喰を研究して、どんどん取り入れていけるように努力していきたいと思います。
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